作品タイトル   作者名   出版社

「由似へ…」   大谷博子

  (集英社文庫 上・中・下巻)   
作品ジャンル(管理人の独断で決定)
 由似の成長物語
あらすじ
  いまは亡き母、由布子に似るように、「由似(ゆに)」と名づけられた少女が主人公です。日々成長し、大人になっていく由似は、死後もなお、誰もに愛され、慕われる母をとても誇りに思うのと同時に、周りの皆が自分の後ろに母「由布子」を見ていることに気付きます。大切な母への思いと、母ではなく「自分」を見て欲しい、という思いのはざまで由似の心は揺れ動くのでした。
 そして父や祖父母、敬愛する卓矢すらも自分の後ろに母の影を見ていることに悩み苦しんだ由似は、と出会い、初めて「由布子」を通してではなく、ただの「由似」を見てもらえたことで、急速に彼に惹かれていきます。不良と思われている彼との付き合いに、周囲は皆反対するのですが…。
おすすめポイント

  母「由布子」は大切な人の死や、たくさんの苦しみを乗り越え、強くそして気高く成長してゆきます。そんな彼女は誰もを惹きつけ、愛されていました。しかし「由似」はまだ成長途中。未熟で迷い悩む、ごく普通の女の子なんです。ですが、周りの人々は由似に「由布子」のようになって欲しい、と過大な期待を寄せていきます。そのプレッシャーに押しつぶされそうになる由似の姿は、実は誰もが悩み苦しみ、通ってきた道でもあります。
 「少女」から大人になっていくときの戸惑いや、周りの人から寄せられる期待へのプレッシャーや、本当の自分を見て欲しい、という思いや、自分は何のために生きているのか、と悩む、そんなことは、多かれ少なかれ思春期には誰もが感じていたことではないでしょうか? かつて「少女」時代に悩んでいた人も、そして今現在悩んでいる「少女」達にも、読んで欲しい作品なのです。

心に残ったこの一言
  「あたしママの望むとおりの人になりたい
     他人の痛みのわかる人になりたい いつかきっと」
      ――香坂由似 (中P98)
こちらもおすすめ!
 「星くず」   
 (集英社文庫 上下巻)

 由似の母親である由布子の愛と青春を描いたストーリー。こちらを合わせて読むとより楽しめると思います。

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