読書日記(番外)

「東京魔人学園外法帖」のレビューです。
思いっきりネタバレですので、ご注意を。

 ◆外法帖を終えて…

第一印象

  ああ、魔人だなぁ…。
 前作「剣風帖」のイメージそのままですね。オープニングで例の音楽が流れてきた瞬間に涙が出そうに…。感無量です。気になる点といえば、京梧が京一とはずいぶん見た目が違ってしまったことくらいでしょうか。それ以外の真神キャラクターたちはほとんど変わっていませんでした。もちろん、作品の雰囲気もそのままですし。いきなり血なまぐさいシーンから始まるのも魔人らしくてイイですね(笑)。

ストーリー

  文句なし。
 ストーリーに関しては、全く文句のつけようがないくらいに、しっかりと作りこまれています。「陽」「陰」でそれぞれ別の視点からストーリーが始まって、最後にはひとつにまとまるところも素晴らしいですし。「敵」の立場からもプレイできるために、ストーリーに説得力と深みがあり、単純な勧善懲悪では割り切れない部分も丁寧に描かれているので、好感が持てます。オカルト・ホラー色が強いのも、また魔人らしくて嬉しいですしね。個々の話については不満もありますが、全体的に出来は良かったと思いました。

システム

 全体の操作性

  変わりなし。
 感情入力の方法や、メッセージのスキップなど、通常の操作に関してはほとんど変わっていません。もうこれは、ある程度完成されたものですしね。戦闘時に関しても、ほとんど変わっていないし。可もなく不可もない、といったところでしょうか。
 ですが、気になったのは装備の変更時にかなりアイテムが多くてわずらわしいのに、スクロールが遅いこと。装備を変えることが多いので、不便でした。特に、今装備しているものがどういう効果なのか分からないのも納得できず。前作ではキャラクターの所に耐性のあるものについてはマークが出ていたと思うんだけどな(麻痺とか毒とか)。

 霊場

  不便かも。
 大して変わってはいませんが、前作は「5階」下りないと出られなかったのが、今回はどこでも出入り自由なのは良かったかも知れないですね。でも前作では方陣技を教えてくれたんだけど、それはなくなったのね。それから階数が多くなっても、いちいち下ボタンでずーっとスクロールさせないといけないのはなぜ。上ボタンで最終階に飛べてもいいのでは。これはすごく不便でした(△で飛べるという情報を頂きました。ありがとう。でも取説には何の記載もないので、このコメントは残しておくことにします。不親切だもん)。それから、霊場がたくさんあるのも特に必要性は感じなかったですね。「富士山」なんて全く行かなかったよ。

 式神

  あってもなくても。
 これに関しては、あってもものすごく便利というわけではないし、むしろ装備品を売れなくなるので、不便な方が多かったかも知れないです。式神を装備していても、勝手に発動しちゃうから、ありがたかった場面は数えるほど。でも自分で発動するんじゃ、ゲームバランスが崩れそうだしね…。キャラクターは個性的で面白かったし、作るのもそれなりにはまりました。とはいえ、前作のキャラクターをストーリー上出せなかったからといって、式神にしたのはちょっと不満が残ります。それなら出せよ(笑)。いやその、「華」を背負ったお方とかね。…出て欲しかったのよ。

 骨董価値

  いらないなぁ。
 これに関しても、装備品が売りにくくなるだけなので、特に必要性を感じませんでした。かえって色々と装備をしなおしたりするのが面倒で。というのも、つい「神代物」をずっと装備するのはもったいない気がして、こまめにチェックしつつ、同じものがあったら装備しなおしていたから。単なるケチともいう…(苦笑)。骨董品屋さんの台詞が変わるのはちょっと嬉しかったですが。

キャラクター

 主人公

  君は誰なの?
 このことに関しては、最後にまとめて書こうと思っているのですが、今回は主人公の役割や存在意義が全く分かりませんでした。この「魔人」というゲームは、主人公に感情移入できるか出来ないか、で面白さが全く変わってしまうと思うので、これは言ってみれば致命的な欠点でもあります。少なくとも私は「龍斗」というキャラクターを描くことは出来ませんでした…。それに、結局主人公は「黄龍の器」だったのでしょうか。それすら分からないんだもんなぁ(号泣)。

 京梧・藍・雄慶・小鈴

  影が薄いよ
 前作とは違って、今回は「陰」側のストーリーもあるので、彼らの登場シーンは半減してしまいました。だからものすごく影が薄くなっています。特に雄慶・小鈴はね。居ても居なくても変わらないくらい。雄慶は四神白虎だったはずだし、このストーリーにはかなりの重要なファクターのはずなのですが、それも全く言及されていませんでした。前作をやっていないと分からなかったのでは?
 京梧は京一よりも大人になった分だけ、迷いもなければ葛藤もなく、ただひたすらに剣に生きるだけの人になってしまい、面白みに欠けますね。藍は「菩薩眼の娘」というのが前面に押し出されたので、十分活躍できていたけど、小鈴は全然活躍の場面がなくて可哀想なくらい。
 今回は最初からみんなが友達・仲間ではなかったせいで、彼らの和気あいあいとしたやり取りがあまり見られなかったことにも原因がありそうです。最初はケンカばかりだったもんな…。

 天戒・桔梗・九桐・風祭

  こちらの方が。
 「陽」メンバーがあまり描写されなかった分だけ、こちらの方が書き込まれているような気がしました。特に彼らは最初から苦楽を共にしてきた仲間だったので、アットホームな雰囲気もあり、口に出さなくても通じているような絆も感じました。かえって主人公が入り込めないぐらいで…。
 天戒様(様付け 苦笑)はこれ以上は必要ない、というほどにしっかりと書き込まれていたので、もう十分お腹いっぱいです。むしろやりすぎの感もアリ。少しは想像の余地がないと寂しいんだよね(ワガママ)。桔梗はちゃんと見せ場もあり、描かれてもあり。ちょうど良かったね。九桐・風祭は出番は多い割には、内面的なものや、過去や家族のことなど、見えてこない部分も多く、ちょっと寂しかったかな。

 「龍閃組」

  なんで戦っているの?
 どうして「龍閃組」の一員になったのか、今ひとつ分からない人も多いですね。なんというか、成り行き? というのも主人公のキャラクターがはっきりしないから。これはまた最後に書くとして、大宇宙党(特に十郎太)とか、真那とか、ピセルとか、支奴とか、ほとんど描かれないままに仲間になってしまう人が多くて、美冬だってピセルとどちらか、なんていうのは酷な選択です…。
 幕府の組織であるはずなのに、自分たちが誰と何のために戦うのか分からず、ただ仲良しグループの寄せ集め、になってしまった感があります。自分の大切なものを護るために戦う、というのは「魔人」のメインテーマのはずなのにね。

 「鬼道衆」

  苦労しています。
 こちらは「龍閃組」と違い、誰もが「復讐」のために戦う、という確固たる理由が存在しているので、その分だけ感情移入もしやすかったですし、キャラクターも描かれていたような気がします。ですが、そうなると「復讐」ではない人たちがないがしろになってしまうのですね。つまりは弥勒や們天丸やクリスですわ。壬生くんは沖田くんと色々あったりするのでまだマシなんだけど。クリスはほのかを護りたいなら「龍閃組」に入った方が自然だし、們天丸なんて、なんで仲間なのか全く不明。天戒様がどうして彼をそんなに気に入ったのかも不明デス(苦笑)。

 その他の人々

  皆さん渋いですね。
 今回は「学園」が舞台ではないだけに、登場する脇の人たちも皆さん大人で、なかなか渋いです。「龍閃組」を率いる百合さんをはじめ、犬神さん、御厨親分さん、お凛さん、もほえもんやら、個性的な面々が揃っていました。もう少し彼らの出番があっても良かったな。特にお凛さんなんて、1、2回しか会わないよ…。杏花ちゃんも今回は大人っぽくて、あまりハジけてくれなかったのがちょっと寂しいですね。京梧をぶっ飛ばして欲しかった…。

 柳生や敵たち

  やはり意味不明。
 
前作でも柳生が何のために「黄龍」を手に入れようとするのか、全く不明だったのですが、今回もやっぱりよく分かりませんでした。ただ闇雲に「世界征服」だの「闇に染める」だのって言われても。そんなの戦隊モノの悪役じゃないんだから、納得できませんよ。彼の野望の原点が見えてこないのよね。という訳で、柳生の手下たちもまったく意味不明なキャラクターたちばかりでした。

エンディングを迎えて

  全体的なこと―。
 私は「剣風帖」というゲームにとても思い入れがあり、それぞれのキャラクターたちにも並々ならぬ愛着があります。だから「外法帖」で全く同じキャラクターのストーリーにする必要はないと思っています。それなら「剣風帖」をやればいいだけのことですから。そういう意味では「外法帖」はこれで正解だったのでしょう。ま、普通の人にとってはね。
 では、前作の「剣風帖」で人生が変わるくらいの衝撃を受け、このゲームがなかったら、今の私はありえない、別サイトはもちろんこのサイトだって存在しなかっただろう、というくらいに影響を受けた私(をはじめとするごく一部の人々)にとっても、満足のいく出来だったか、というと決してそうではないと思います。
 なぜならば、この「魔人」というゲームはなによりも「主人公」を想像して創造していくゲームだからです。プレイした全ての人の数だけ「主人公」が存在し、それは多分自分自身でもあって、だからこそストーリーにのめり込めるし、感情移入も出来るんです。が、今回は主人公の存在意義が全く無いのと、「黄龍の器」であると明言されなかったために、彼の戦う意味すら分からず、仲間たちがどうして集まるのかも分かりませんでした。ストーリーの根幹となる部分(だと私は思っている)が失われてしまったんですね。ですから、結論としては「剣風帖」ほどにはハマれなかった、との一言に尽きます。

  いろいろ書いてきましたが。
 ストーリーは素晴らしかったと思います。前作の期待を裏切らない出来でした。プレイしていても面白かったし、繰り返し遊べるゲームになっていると思います(最低2回はやって欲しい)。幕末が舞台であり、歴史の中に埋もれてしまった若者たちの見えない戦いを垣間見ることもできるので、歴史好き、幕末好きの方にはオススメ出来るものになっていると思います。「剣風帖」の前に、こちらから始めても面白いと思いますよ。むしろ「剣風帖」を知らない方が純粋に楽しめるのかも知れないです…。

 それから、気になるのは次回作ですね。三部作だとは知っているので、次があることは間違いないでしょうし、すでに構想も出来ているんでしょうから、今度はちゃんと「主人公」が主人公らしい物語を作って欲しいと思う私なのでした。でも舞台が第二次世界大戦辺りの話らしいのが気になるところ。どういう描き方をするにしろ、戦争ってのはどうかなぁ…。
 あ、ついでに別サイトに外法帖プレイ日記がありますので、興味のある方はそちらもどうぞ。思いっきりネタバレの嵐ですが(苦笑)。

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